山内マリコ 「買い物とわたし お伊勢丹より愛をこめて」
今、香港の大学に2週間の短期留学(奨学金的なものを貰えたので破格の値段)をしているんですが、夜は結構暇なので久々にブログ更新。
この本は、山内マリコさんが「週刊文春」にて、2014年春から一年ちょっとの間、連載をしていたエッセイをまとめたもの。
エッセイの内容は、好きなものへの思い、30代を迎えたこと&結婚を経て変化した暮らし方などを、買い物を通して振り返る内容になっている。
反消費でも消費礼賛でもなく、そこそこまじめな消費者でありたいと思っています
と書いてあるけど、まさにそんな感じ。
個人的には山内さんが昔更新していた名画座巡りのブログ
theworldofmaricofff.tumblr.com
がすごい好きで、今回のエッセイ集はこのブログを思い出した。
このブログを読むまで1980年代以前の日本映画は、シネフィルっぽい人(ex.蓮實重彦)がしかめっ面で語っているような印象だったんだけど、山内さんがハイテンションな文体で若尾文子のことを「あやや〜」とか呼んで、楽しそうに感想を書いているのを見て、「あっ、こういうテンションで楽しんで見ていいんだ!!」って思って、そこから増村保造、成瀬巳喜男、木下恵介といった名匠の作品を見る大事なきっかけになった。
そこから、自分も「佐田啓二と中井貴一の親子、そっくりじゃん!」とか、「若い時の加山雄三かっけ〜」みたいな、しょーもない感想ばっかり抱くようになりました。
このあたりはそんな思い出が詰まっている作品
話をエッセイ集に戻すと、個人的に好きなエピソードは「プラダの財布」と「中邑真輔のキーホルダー」。
あとは、文中で山崎まどかさんのこの本の話も出てくるけど、読んだ印象もこの本に近いので、この本が好きな人にはオススメです(逆も然り)
この本を読んだ次の日(今日)、謎の少林寺拳法体験の後によったショッピングモールで、「日本で買うより安いし、店員さん英語で優しく接客してくれたし、来年から私服メインの会社で働くし、昨日読んだ本面白かったし」とありとあらゆる言い訳を自分に言い聞かせて、ブルックス・ブラザーズでシャツを買ってしまいましたとさ。
就活の振り返り
ここでは報告していなかったですけど、少し前に就活終わりました〜。
一段落したので、働き始めた後に振り返ることができるように、就活で考えてきたことを文字に残しておきたいと思う。友達に読まれると恥ずかしいけど。
1. ざっくり考えていたこと
(1) 早めに始めて、早めに終わらせよう
僕は1浪1留しているので、周囲の友達には既に働いている人がちょくちょくいた。彼らから話を聞いたりしたところ、自分はだいたい第一印象が人より悪いタイプの人間なので、集団面接とか苦手そうだし、早めに始めて経験を積んでおくのが良さそうだなと思った。
だから、夏からちょくちょくインターンに応募したりしていた。冬のインターンはもっと多く応募した。本選考は10企業ほどしか出していないが、以前のESが使いまわせたので楽だった。
この方針は、我ながらよかったと思う。実際、3月の就活解禁直後に志望度高い企業から内定をいただけたので、そこからは興味が本当にある企業しか受けなかったので、かなりストレスフリーな就活になった。
2月頃、その企業の3次面接前にナーバスになった時期が1週間ほどあり、それが就活中で一番辛かった時期だけど、他の人よりわりと短い期間だと思う。
(2) イキイキと働きたい
大学時代に、数は決して多くないが、社会人の知り合いの方ができていたので、その人たちの働いている様子を見ていて、有名な会社に入ることが必ずしも幸せに繋がったりしないのだなーってことをなんとなく肌感覚で感じていた。きちんと言い換えると、「ある環境が幸せを保証してくれるわけではない」っていうこと。
でも、同時に「社会人になるのもそんなに悪くなさそうだぞ!」みたいなことも感じていた。だからよくある「働きたくな〜い」みたいな愚痴は口に出さなかった気がする。(働き始めたら言い出す気はするけど)
それらを踏まえて、充実感をもって日々過ごすために何が必要なのかを考えてみると、自分の人生で、自分がコントロールできる部分を少しでも増やしていくことが大事なのかなーという結論に至った。もちろん完全にコントロールすることは不可能だけど、会社に長期間コントロールされるとあまりハッピーにならないのかなーって感じた。
あとは、ここにも書いたけど「働きマン」の影響がデカイ。いい仕事したなーって思って死にたいって思ってた。「働きマン」は必読
2. やりたいことが明確にはないけど、どうしよう?
これは就活を始める前から気にしていたことだった。明確にこれといってやりたいことがなかった。ってかあったらやってるわ!って思ってた。かといって就活を止めるのもアレだし、色々な経験は積んでいたので、以下の2点を考えた。
⑴自分を評価してもらいやすい企業を受けよう
⑵やりたいこと見つかった時に動けるように実力が若くからつく&ある程度会社のネームバリューがある企業を受けよう
⑴に関しては、一歩踏み込んで2つのことを考えた。
1つ目は、自分の経験の中から、楽しいと思った要素や、他の人より得意な要素を抽出し、そこから、その要素がどんな仕事なら最大限活きるか考える。
2つ目は、内定をもらえる可能性があるか探る。具体的には、募集人数が極端に少ない企業や、知人で働いている人が思い浮かばない企業は極力避けた。
「〇〇が内定もらえたのなら、自分にも全くチャンスがないわけではなさそう。」みたいな感覚と、そこから生まれる自信は大事な気がする。
⑵に関しても、一歩踏み込んで2つのことを考えた。
1つ目は若い時から競争にさらされる環境があるかどうか。(そういう環境じゃないと、人一倍だらける傾向にあることを強く感じてた)
2つ目は業界として成長しているかどうか。(業界として停滞していると、任される仕事もわりとルーティンワークになりがちだし、しかも自分の努力の成果が結果に反映されにくいから、やってて手応えが少ない、勝ちグセが身につきにくい、という話を聞いたことによる)
ちなみに、ネームバリューをある程度大事にした理由は、やっぱりリスクを取りきれなかったというのもあるし、1社目の社格は、次の選択肢を増やすことにも減らすことにもつながるという話を受けたというのもある。
他にも、文字に残しておきたいことがあるのだけど、だいぶ長くなったので次に持ち越す。
その2はこちら
「出版文化論」佐々木敦×九龍ジョーの感想
今日の4限、映画論の授業中にたまたまtwitterを見ていたら佐々木敦氏が、5限の出版文化論の授業のゲストスピーカーにライターで編集者でもある九龍ジョーさんが来ることを告知していた。たまたま5限空いていたし、他学部の授業であるが迷わずモグることを決意。
九龍さんは、音楽だけでなく、様々なカルチャーの面白い(面白くなりそうな)モノや人を察知する感覚が鋭くて、いつも彼のツイートや記事、以下のような著作を通じて、自分が知らない世界を教えてもらっている。
遊びつかれた朝に 10年代インディ・ミュージックをめぐる対話 (ele-king books)
- 作者: 磯部涼,九龍ジョー
- 出版社/メーカー: Pヴァイン
- 発売日: 2014/04/25
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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今年、初めてプロレスを見に行ったのも、九龍さんの本がきっかけの一つである。
今回の授業では、九龍さんのそれまでのキャリアを振り返ることがテーマになっていた。大教室で行われている授業だったので、自分のように九龍さんのことを知っている人がいれば、一方でおそらく単位目当てでこの授業を履修しているんだろうな〜っていう人もいて、そういう人にもわかりやすいように(cero、坂口恭平、大森靖子、又吉など、九龍さんが関わっているクリエイターの固有名詞は出てくるものの、彼らについて特に掘り下げたりはしていなかった気がする)九龍さんのキャリアが振り返られていった。
余談としては、ギリギリで教室に着いたから前の方の席に座っていたのだけど、それより遅れて前の席に座った人が九龍さんの話によく笑うなーと思っていたら、カルチャーブロスの編集長だったことが最後に判明してびっくりした。
1時間半があっという間の授業だったけど、その中でも特に印象に残った点を3点にまとめる。授業中のメモをもとに書くから、一部ニュアンスが違ったりするかもしれないけど。
- とにかく本を読んで、本の中に師匠を見つけろ
- 至る所が現場になりうる
- 好きなメディア(雑誌や出版社)ではなく、苦手なメディアに関わる方が仕事が来るよ
1. とにかく本を読んで、本の中に師匠を見つけろ
九龍さんは、「現場」にいるイメージが強かったので、これが一番意外だった。クリエイターの人が考えていることを整理したり、アドバイスをするためには、知識が重要だから、時間のある学生のうちに様々な本(哲学など)を読んで、自分の本の中の師匠のような存在を見つけようと言っていた。授業中に言っていた本にはこんなのがあった。
このあたりの本の話をしているときの熱量と、話の展開の速さはさすがプロってすごい感じた。
ちなみに、九龍さん自身が様々なジャンルに詳しくなった要因(気になっていた)は、男子校時代にプロレス、デスメタル、お笑いに詳しくなって、そこからどんどん掘り下げていくうちに、立川談志につながったりした経験や、大学生時代にも障害者支援の団体に関わったこと(このエピソードが秘密にしたくなるくらい面白かった)からドキュメンタリー映画を知ったりした経験が大きいらしい。
今は、面白いと思う若者と一緒に遊んだりしているうちに、その若者のつながりで色々な人やモノを知ったりするらしい。そして、その遊んでいる若者の一部が有名になったりするらしい。
「面白いと思うことを話してくれれば、その人のモノの見方とかわかる」みたいなことを言ってたけどそれは本当にそうだと思う。
2.至る所が現場になりうる
自分自身がよく現場派のライターだと評されることが多いけど、みたいな所から派生して、このことを言っていた。例えば、確かにキンプリの応援上映、テニミュなどの現場に行ってみると、ライブハウスと映画館の垣根がなくなりつつあるのではといった仮説は生まれる。でも、現場というのは、別に必ずしもそういった場だけのことを指すわけではなくて、何かが起きていればそれは現場なんだから、今でいったらyoutubeを見るパソコンの前だって現場になりうるよ、とのこと。この話を聞いたときは、tofubeatsやマルチネを連想した。
ちなみに、今はそういったニュージャーナリズム型のライターは少ないから、そういった現場で感じたことを記事にできるライターを目指すのはアリとのこと。確かに、キンプリのことを映画批評の文脈だけで語っても、片手落ち感はする。
3. 自分らしい企画が通るのは好きなメディア(雑誌や出版社)ではなくて、むしろ反対
これは九龍さんの自論らしく、何回か言っていた。九龍さん自身、太田出版に在籍していた時、クイックジャパンは嫌いで、 嫌いだったからこそクイックジャパンに仕事で関わるようになったときも、自分が考える企画は他の編集者とテイストが異なっていたので、それが自分にしかできない仕事としてどんどん認められていくようになったとのこと。今勤めている出版社でも、大森靖子や長渕剛の本を出すことができているのはそのスタンスを変えていないかららしい。
他にもたくさん面白い話があって、もぐって本当によかった!
2016年6月に読んだ本
6月に読んだ本をまとめておく。今月は、タマフルの海外文学特集の影響と、時間に余裕もあったことで海外の作品をたくさん読んだ。タマフルの特集のことはここに書いたのでよかったら。
1.ダニエル・アラルコン 「夜、僕らは輪になって歩く」
内戦期に政府に反抗したことで伝説となった劇団が、内戦の終結後に各地を回る公演旅行に再び出向くことで始まる物語。
もう過去に何か取り返しのつかない重大なことが起きてしまったことが匂わされるが、それが何かよくわからないし、なんなら語り手が何者かすらもよくわからないというスタイルが独特だけど、初めからスラスラ世界観に入っていけた。語り手の正体が明らかになる瞬間や、とうとう物語の主人公に対面した時の、主人公の発する一言の重みが強烈だった。
2.呉明益 「歩道橋の魔術師」
翻訳大賞でも取り上げられていた台湾の小説家による作品。かつて台北に実在したという「中華商場」で幼年期を過ごした主人公たちが当時そこで起きた不思議な出来事を回想する話。「村上春樹が好き」っていう設定の登場人物がいたって普通に出てきて、もうそういうスケールの作家なんだな〜と改めて思う。
魔術師は二つの目で違う方向を見ながら言った。
「それは私にもわからないな。小僧、いいか。世界にはずっと誰にも知られないままのことだってあるんだ。人の目が見たものが絶対とは限らない。」
「どうして?」と僕は訊いた。
魔術師は少し考えてから、しゃがれた声で答えた。
「ときに、死ぬまで覚えていることは、目で見たことじゃないからだよ。」
3.リュミドラ・ウリツカヤ 「陽気なお葬式」
1991年の夏のニューヨークで、ソ連から亡命した主人公の病床に、過去に主人公と縁があった人たちが続々集まり、主人公との思い出を回想する話。
自分が愛した人が亡くなることと、母国がなくなりそうになることが同時期に怒っている模様を、重くなりすぎず、なんなら祝祭感溢れる感じに描くってすごい巧みだな〜って思った。
訳者のあとがきより
「解決策を示さないのか」あるインタビューでそう言われたとき、ウリツカヤは答えた。
問題を語ること、考えること、共有すること、それは既に、ひとつの行為なのだ。際限のない無理解と暴力に拮抗するひとつの「行為」なのだと。
4.前田司郎 「道徳の時間/園児の血 」
三島由紀夫賞(文学)、岸田國士賞(演劇)、向田邦子賞(テレビドラマ)といった幅広いジャンルの賞を総なめにしている前田司郎の最新作。彼が率いている五反田団に関しては、去年の冬に怪談を聞きに行っただけのまだまだビギナーだが、彼が脚本を担当した「横道世之介」はオールタイムベスト級に好きな映画。監督の沖田修一と前田司郎が中高の同級生なのは最近知った。
表題作の「道徳の時間」は、突如浣腸が流行ってしまったクラスでの先生と生徒の攻防を描いた作品。
浣腸が流行ったのは四年生の一学期が最初だった。
浣腸といっても、直腸に薬液を注入するわけではない。両手の平を合わせ、二本の人差し指を突き立てる。子供によっては中指を立てる者もあるが少数派である。標的の後ろから近づき、「かんちょー」と叫びながら、その二本の指を相手の肛門のあたりに突き刺す行為のことを言う。
「かんちょー」と発声するとき「かん」にアクセントを置く一群と、「ちょー」にアクセントを置く一群があり、「かん」にアクセントを置くほうが大多数であり、時間が経つと全員が「かん」にアクセントを置くようになった
最初の一行で十分伝わるのに、この細部へのこだわりが好き。
5.ムシェ 小さな英雄の物語
翻訳大賞受賞作。内戦下のスペインで、バスク地方に住む子供たちは戦火を逃れて、ヨーロッパ各地に疎開したという実話から生まれた物語。アウシュビッツ以外の強制収容所の話だったり、今まで決して大々的には語られてこなかった終戦間近のリューベックで起きた悲劇なども勉強になるが、やっぱりタイトルに書かれている「小さな英雄」の話として読むと感動する。
6.エドガル・ケレット 「あの素晴らしき七年」
イスラエルで活躍する作家の短いエッセイ集なんだけど、どうしたってイスラエルで暮らすしんどさが垣間見えちゃう、でも、そこをユーモアで乗り切ろうとする姿勢の素晴らしさが味わえる。確かにヴォネガットっぽいって言われるのもわかる気がする。両親の祖国であるポーランドに行った際のエピソードが特に好きで、ジャムサンドを食べたくなる。
父さんが何年も前に話してくれたベットタイム・ストーリーを思い起こしながら、魅力的な筋があるだけじゃなく、ぼくになにかを教えようとしているのだと気付いた。
どんなに見込みの低そうな場所でもなにかいいものを見つけんとする、ほとんど狂おしいまでの人間の渇望についての何か。
現実を美化してしまうのではなく、醜さにもっとよい光を当てて、その傷だらけの顔のイボやしわのひとつひとつに至るまで愛情や思いやりを抱かせるような、そういう角度を探すのをあきらめない、ということについての何か。
5月・6月あたりに聞いていた音楽
ここ最近聞いていた音楽。いつか振り返るための備忘録。
1. HALFBY - Slow Banana feat. Alfred Beach Sandal(Official Music Video) - YouTube
HALFBYのアルバムは冬に発売してたけど、夏に合う感じ
すぐにvideotapemusicが作ったとわかる映像。こないだ見に行ったceroの野音もVJを彼が担当してたんだけど、それがめちゃくちゃ良かった。
2. Homecomings "PERFECT SOUNDS FOREVER"
HALFBYと同じセカロイのHomecomingsの新譜もよく聞いている。MVの曲はタイトルの時点で優勝って感じなのに、歌詞も良い。アルバムだとこの次のButtersandって曲も好き。
ホムカミはアルバム発売日あたりにustやってて、そこでカバーしてた髭の「サンシャイン」、懐かしくて同世代感があった。あとは、止められてたけど、アジカンの「海岸通り」とかこんないい曲だったっけ?って感じだった。
3. Yumi Zouma - Keep It Close To Me - YouTube
スウェーデンに留学していたころにEPが出て話題になってた記憶だから、ようやくって感じではあるけど、めちゃいいので問題なし。
4. CAN'T STOP THE FEELING! (From DreamWorks Animation's "Trolls") (Official Video) - YouTube
面接終わった後に聞いていた。面接から開放された喜びとよく合う曲。MV始まって1分くらい経ったところで出てくるドーナツ屋さん、多分「アイアンマン」で出てきたお店。「Dope」にも出てきた気がする。
ジャスティン・ティンバーレイクを、彼のことを知らない人にどう説明するかという話になって、自分は「ジャスティン・ビーバーの10年後みたいな人」と例えたけど、「歌って踊れるキムタク」って例えた先輩の方が近い気がする。
あとはMayer Hawthroneの新譜やRadioheadの新譜も聞いた
Apple Musicなんだかんだ便利なので、生活に欠かせなくなっている。
タマフルの「海外翻訳小説の身もフタもない楽しみ方を学ぶ」特集が面白かった話
1ヶ月前ほどのタマフルの「海外翻訳小説特集」がとても面白かったので、最近はちょっと意識的に海外文学作品を読むようにしている。ちなみに、それまでは1年に5冊くらい読むペースだったのだが、ここ1ヶ月で4冊ほど読んでいる。
もうすぐポッドキャストの期限が切れてしまうので、今のうちに聴いてみてもらいたい。
その特集が面白いと感じた点が2点あった。2の方が個人的には重要。
1. 敷居が低かった
特集のゲストは、個人的には「東京マッハ」でお馴染みの米光一成さん。東京マッハとは何?って方はこちらのエントリを読んでいただければ。
最近まで翻訳小説を読みきる力がなかったという米光さんが、読むための細かすぎるずるいワザ(付箋を貼るは即採用)や、思わず共感できる翻訳小説を読むときの障害などを語ってくれるので、作家や愛好家が語るよりも敷居がとても低かった。
2. 海外文学を読む醍醐味を再認識した
翻訳小説を読むことのメリットで挙げられていたのが、「平和になる!」。
「大きく出たな〜」と内心思っていたが、そこからのうたさんとの会話はパンチラインだらけだった。
簡単に要約&抜粋すると
・翻訳は決して日本語から外国語に置き換えるということだけを指すのではない。そもそも、言葉を発するという行為は、自分の気持ちや考えを翻訳するいうことと同義である。だから、自分のモヤモヤした思いをうまく言語化できない人は、人間関係がうまくいくはずない。
・海外文学を読んでいるときに、スルスル読めずに違和感を覚えるというのは、異文化に接したときに覚える違和感と一緒で、そこに気付き、汲み取ろうとすることにこそ、楽しさがある。日本人が日本人に向けたエンターティメントだけに触れていると、そこに気付きにくいのでは?
・相手が何をどういう風に言おうとしているのかを汲み取ろうとする訓練をするためには他者が絶対に必要
・わからないものに意識を向ける方が楽しいって感覚は分かる
自分がブログを書こうと思った理由の一つに、自分が感じていることをきちんと言葉にできるようにしたいという思いがあったことを思い出させてくれるような内容だった。
あとは、こういった記事やツイートなどを思い出した。
いちばん大切なのは、ある作品を「おもしろい」と感じるとき、それがどれくらいおもしろいのか正確に理解する力じゃないでしょうか。100のおもしろいと、60のおもしろいを同列に扱っている人が多い気がします。
自分の住む小さな世界の幸せを愛おしむ、みたいなのは年取ってからでいいので、十代には広い世界を夢見て欲しいし、自分がいる場所はそこにつながっていると信じて欲しい。海外文学や外国映画は若い世代にものすごく有効だし重要です。
— 山崎まどか (@romanticaugogo) 2015年1月23日
ちなみに、海外文学と一口にいっても色々あるけど、短編小説なら比較的こんがらがることなく読める気がするし、新潮クレストブックから出ている本は基本的に面白い。
面白い短編といえばこれとか
- 作者: ジョンアーヴィング,John Irving,小川高義
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2007/08
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特集で言及されてたこれらの本は無類に面白い
ここ最近読んだ本はこんな感じ
これから読もうと思っている本はこれら
2016年5月に読んだ本
小説の感想で1記事を書けるほどの語彙力や文章力はないのだけども、だからといって読書メーターに記録だけを残すだけでももったいないので、これからは各月毎にまとめて紹介しようと思った。
1. ラッタウット・ラープチャルーンサップ 「観光」
- 作者: ラッタウットラープチャルーンサップ,Rattawut Lapcharoensap,古屋美登里
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2010/08/30
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このブログで紹介されていてずっと前から気になっていた本
豚に「クリント・イーストウッド」という名前をつける主人公が登場する「ガイジン」が面白かった。
優れた物語を読んだというだけでなく人と世の真実を知った、と読者が思うような短編を書ける作家は極めて少ない。ラープチャルーンサップはそういう貴重な作家のひとりである。
2.シーナ・アイエンガー 「選択の科学」
- 作者: シーナ・アイエンガー,櫻井 祐子
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2010/11/12
- メディア: 単行本
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留学中、ベタではあるがTEDをいくつか見て勉強していた。その中でも、記憶に残ったのが、この本の筆者でもある彼女が話したこのスピーチだった。
この本自体も面白かったのだけど、図書館で借りたのでそもそもかさばるし、メモを残せないからあまり内容が自分の中で整理されていない。今度読むときは文庫版で。
たとえささいな選択であっても、頻繁に行うことで、「自分で環境をコントロールしている」という意識を、意外なほど高めることができるということだ。
人間の自己決定権や無力感の捉え方は、外部の力だけで決まるわけではない。人間は、世界に対する見方を変えることで、選択を生み出す能力を持っているのだ。
たとえ状況が自分の手に負えないように思えても、自分の力で何とかするという気持ちを持つことで、より健康で幸せな日々を送ることができる。
3. ケリー・マグゴニガル「スタンフォードの自分を変える教室」
「サーチ・インサイト・ユアセルフ」を読んだときにも書いたけど、最近は心を強くすることに関心が向いている。その流れで読んだ本。
一日分でもいいですから、その日に行なった選択をふり返ってみてください。一日の終わりに、「自分がいつ目標を達成するための選択、あるいは妨げてしまう選択をしたのか」を分析してみましょう。そのように自分の選択をふり返って意識することで、いい加減な選択の数が減っていきます。それにより、意志力は確実にアップします。
問題は、理論をインプットした上で、どう日々の生活に落とし込むのかという点にあると思う。それができないと、いつまでたっても、いろいろな本を読むことに時間を費やすだけで、意味がないなーと。
そのほかの本はなんだかんだブログに感想を書いているのでよかったら読んでみてほしい。