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武田砂鉄「紋切型社会」と、そこから派生した話

発売時からTLで名前を見かけることが多かった武田砂鉄の「紋切型社会」を読んだが、とても面白かった。ずっと感想を書きたいと思っていたが、なかなか筆が進まなかった。

 

紋切型社会――言葉で固まる現代を解きほぐす

紋切型社会――言葉で固まる現代を解きほぐす

 

 「育ててくれてありがとう」や「会うといい人だよ」といった、ついつい口にしがちなフレーズを切り口にして、そこから現代日本を批評していくという今まで読んだことのない本だった。

フレーズの目の付け所も鋭い上に、そこからぐいぐい読ませる文章が続いて、提起された問題がいつの間にか説得力を持って響いてくる。糸井重里や宇野常寛といった人気者へも厳しい視線を投げかけていて恐れ知らずだなと。

思考停止を避けたい方にはオススメです。

 

ここからは、そこから派生した話。

www.cinra.net

上のスカート澤部さんのインタビューも著者の武田氏の仕事だったことを先日知り、「紋切型社会」を読む前から氏の文章に接していたことが判明する。

このインタビューを最初に読んだ当時、自分もあまりお酒飲めないので、「飲み会に対して抱いている違和感を的確に言語化してくれている...!」と感激したから、もうこの段階でこの人の物の見方が自分の肌に合っていたのかも。

 

なんでそんなに酒が欲しいのか。飲み会に誘ってくる人って、まだまだ壁があってそこまで仲良くない間柄であったとしても、飲めばなんとかなるみたいな空気を出してくるじゃないですか、あれがもう信じられなくて。

受け入れろとまでは言わないけど、こういうことを考える人もいるということは頭の片隅に置いておいて欲しい。お酒なくていいからお菓子食べたい。

 

お酒といえば、今週のバナナムーンのpodcastでも気になる部分があった。今週は、ノンストップ始まって以降友達がいない設楽さんに、友達を見つけてあげようという話になっていたが、そこで設楽さんが自分に友達ができない要因の一つとして、お酒を飲まないことを挙げていた。 友達になるために、避けて通れない通過儀礼として立ちはだかる「飲み会」。恐ろしい…

 

自分も、これから社会に出たら飲み会に出席しなきゃいけない場面が増えるだろうが、飲めないことよりも、酔った人たちが交わす雑な話を愛想よく聞き続けられるのか甚だ不安だ。

 

そんなことを思いつつ、次に読んだ山口瞳・開高健の「やってみなはれ みとくんなはれ」は、2人が同時期に働いていたサントリーの社史が書かれた作品。

やってみなはれみとくんなはれ (新潮文庫)

やってみなはれみとくんなはれ (新潮文庫)

 

「サントリーのことを書くということは、鳥井信治郎のことを書くことと言い換えてもいい」と山口瞳が作中述べている通り、内容の中心は創業者鳥井信治郎の生涯なんだけど、彼が並大抵の人ではないことがわかる。昭和版「ソーシャル・ネットワーク」みたいな話。国産ウィスキーを作るくだりを読むと、お酒があまり好きではない自分も思わずグッときてしまう。あと、「マッサン」のモデルになった竹鶴夫妻が出てくるのも熱い。

『洋酒天国』の時代精神──矢作俊彦|メンズファッション、時計、高級車、男のための最新情報|GQ JAPAN

開高・山口が手がけた「洋酒天国」は今でいうとオウンドメディアの先駆けだったっぽい。