Reach For Tomorrow

2017年卒予定の大学生です。日々感じたことを記しておくブログです。

山井太「スノーピーク 『好きなことだけ!』を仕事にする経営」からユーザーに焦点を絞ることを考える

 ユーザーのことを考えるという、至って当たり前のことをもう一度改めて考えてみようと思っているときに読み返したのがこの本。

スノーピーク「好きなことだけ! 」を仕事にする経営

スノーピーク「好きなことだけ! 」を仕事にする経営

 

 個人的には、スノーピークといえば、フジロックでキャンプをしている人たちが使っている人がいるアウトドアブランドというイメージであった。キャンプは、フジロックのときだけしかしない私は、高価だけど圧倒的な高品質商品を展開しているといった知識も皆無であった。

 スノーピークのミッションステートメントには、「自らもユーザであると言う立場で考え、お互いが感動できるものやサービスを提供」と記されている。これだけだと、正直どこの会社でもあるようなメッセージであると思う。

 ただ、このミッションステートメントを実行するためにどこまで踏み込んでいるかという観点から見ると、スノーピークはかなりエッジが立っているのだなと感じた。

 特に以下の2点が代表的なものだと感じた。

①商品の永久保証

②ユーザーと直接語り合うイベントの開催

また、これらの施策は、もちろんユーザーのことを考えた施策であると同時に、副次的な効果もかなり高いものだと思う。①は製品の開発力、②は社員のモチベーション向上といった効果も狙うことができる。 

そういった施策が複合して、熱心なファンを作り出すことに成功し、下記のようにデジタルでも良い反応を獲得できているのだなと思いました。

www.nikkei.com

これが最終的には、消費者価値を高めることにつながっていくという理解をしました。

「How Google Works」で語られている「ユーザーに焦点を絞れば、他のものはみな後からついてくる」について改めて考える。

 学生時代にこの本を読んだときに、当たり前のように感じていた「ユーザーに焦点を絞れば、他のものはみな後からついてくる」というフレーズは、実際働き始めてみると、どうしても目先のターゲットを優先してしまうことがしばしばあり、なかなか突き詰めて実現するのは難しいものだと実感した。

How Google Works

How Google Works

  • 作者: エリック・シュミット,ジョナサン・ローゼンバーグ,アラン・イーグル,ラリー・ペイジ
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
  • 発売日: 2014/10/17
  • メディア: Kindle版
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  そんなことを考えながら読んでいたこの本では、「ユーザーに焦点を絞る」と言うことを、「消費者視点に立って考える」と言い換えられてように感じた。

USJを劇的に変えた、たった1つの考え方  成功を引き寄せるマーケティング入門

USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門

 

 ここで語られている消費者視点とは、下記のように定義されていた。

 USJが消費者視点の会社に変わったと言うことがV字回復の最大の原動力だと思います。

 消費者視点とはどういう考え方でしょうか?私がかつて修業したP&Gというグローバル企業が信じている価値観に「Consumer is boss.」というものがあります。あの会社がやろうとしていた考え方はこの消費者視点に限りなく近いと思います。つまり「消費者の方を向いて、消費者のために働け」という意味です。

(中略)

 消費者視点の会社であるという事は、とにかく消費者の喜ぶことならば何でもしますということではありません。むやみにコストをかけて消費者の要求に対応するようでは、中長期では消費者価値を生み出すことができなくなるからです。会社がずっと続いていくためには、様々な制約の中で総合的な判断を重ねていくことになります。その難しい判断の起点となるのは結局のところ「どれだけの消費者価値につながるのか」という1点に尽きるのです。

 簡単に言えば会社側のどんな事情もどんな善意も、消費者価値につながらないのであれば(消費者に伝わらないのであれば)一切意味がない。そう腹をくくった意思決定をできる会社が消費者視点の会社です。

 

 この後、なぜ消費者視点を突き詰めるのが難しいのかにも言及されていて、そこで書かれていることは、まさに今の自分が直面している現状と近くて、ヒヤリとした。

  ここで、改めて、「ユーザーに焦点を絞る」(消費者視点に立つ)ということが具体的にどういうことなのかを今まで読んできた本などで振り返って勉強していければと思っている。

森岡毅 「USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門」で語られている日本のマーケティングの課題

社会人になってもう一度この本を読んでみたら、学生の時に読んだ時より、具体的にイメージがつきやすくてとても勉強になった。

USJを劇的に変えた、たった1つの考え方  成功を引き寄せるマーケティング入門

USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門

 

特にここの部分は私がリアルに直面しかかっている課題だった。

 TVCMを使用している多くの企業のうち、どれだけが自社のTVCMの効果をきっちり測定分析できているでしょうか?広告代理店から年に一回届けられる「メディア・レビュー」と題された彼らにとって都合の良いデータ話をしているのではありません。私が言っているのは、自社内で効果を判断できる能力の話です。

 敢えて申し上げましょう。大多数の日本企業ではTVCMの効果測定ができていません。効果測定を自社内でちゃんとやる能力すらありません。だから広告代理店やTV局にとって、いつまでも最高に素晴らしいお客様なのです。

(中略)

 なぜでしょうか?答えは明確です。これらの会社にちゃんとしたマーケティングの機能がないからです。

 USJがやったように、マーケティングができるスタッフをある程度の人数揃えて、そのマーケティングが機能する組織構造と社内のシステムを作れば、より効率的な広告予算の執行を実現できるようになります。まず違ってくるのはTVCMの質です。本当に顧客に買いたいと思わせるTVCMを広告代理店に作らせることができるようになります。

 ここで書かれているマーケティングが機能する組織体制については、前回まとめを書いたこの本でも言及されていた。ここでは、TVCMというよりデジタルマーケティングという文脈で語られてはいるが、決して異なるものではないと思う。

m-tenenbaum.hatenablog.com

ここでは社内に持つべき機能として、下記の5点が挙げられている。 

①顧客を見える化し、行動変容につながる打ち手を考える機能

②デジタルに落とし込み、どのようなキャンペーンを実施すべきかを企画する機能

③結果を中間指標も含めてどのように評価し、改善していくべきかを考える機能

④社内データを把握し、分析できる機能

⑤アドテク・ベンダーの評価活用、プロセスを考える機能

USJの本で指摘されている日系企業の課題は⑤以外の全てと考えても問題はないのかなと思う。

これから先、日系企業のマーケティング部署とやり取りする上で、こういった課題は少なからず抱えているのではないかということを念頭に入れてお話をしていければ良いなと思う。

デジタルマーケティングについて「BCGが読む 経営の論点2018」からまとめてみた

年末年始は時間があり、下記の本から、自分の仕事と関係のあるデジタルマーケティングについて書かれていた部分を読んだので、簡単にまとめてみた。

 

BCGが読む 経営の論点2018

BCGが読む 経営の論点2018

  • 作者: ボストンコンサルティンググループ
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
  • 発売日: 2017/11/23
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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 1. 現状のデジタルマーケティング

 まず、現状では、デジタルマーケティングを導入していると言っても、マス向けマーケティングの延長線上の発想に留まっている企業が多いと指摘している。

具体的には、YouTubeに広告を出した、Facebookにブランドページを作成した、などが挙げられる。確かにこれらは広告枠がデジタルになっただけで、デジタルだからこそできるマーケティングだとは言い難い。

 2. 理想のデジタルマーケティング

 それでは、「デジタルだからこそできるマーケティングとは何か?」と考えた時に、ここでは、デジタルの持つ技術やデータを用いて、多様なユーザーのそれぞれの購買・消費行動(カスタマージャーニー)を掴み、彼らの行動が変わる「モーメント」を発見して、そこのツボをしっかり突くことが、まさにデジタルだからこそできるマーケティングだと語られている。

 また、これがまさしく「ユーザーを中心に据えたマーケティング」と同義だと主張している点も非常に重要であると感じた。

 3. 理想に向けて必要なアクション

 では、そういったデジタルだからこそできるマーケティングを進めるために必要とされていることが2点挙げられている。

  (1) ユーザーの行動の「見える化」

 これは、ユーザーの情報を多面的に獲得して、一連の行動としてつなぐことが、精度の高いレコメンデーションを実現するからである。

  (2) 「ユーザーを中心とした組織」を実現していくための構造改革

 これは、往々にしておきるマスマーケティングとIT部門との間にある組織的な壁を打破しない限り、デジタルだからこそできるマーケティングは実現が難しいからである。

 4. 今後の流れ 

 (1) ユーザーデータの異業種連携・活用による新たなモデルの構築

 従来の隣接領域だけではなく、異業種プレイヤーが保有するデータを持ち寄り、連動することで、これまでとは違う角度からユーザーの生活に迫ることができ、まさに前述したユーザーの行動の「見える化」につなげることが出来る。

 (2) AIを活用したパーソナライゼーション

 これまではモバイルがユーザーの情報をインプットして、また、それをアウトプットするデバイスとして支配的な地位を集めていた。しかし、最近では、情報をインプットするデバイスにはスピーカー、アウトプットする方法にはOOH広告などが出てきた。そういったデバイスの多様化をつなぐ存在として重要になってくるのがAIであり、これからはAIを用いて、各々のユーザーにあった最適な情報を提供していくことを目指す。(これはまさににGoogleが掲げるAIファーストを指すと思う)

 

 5. 読んで思ったこと

普段自分が仕事で取り組んでいる部分は、ここで語られるような大きな枠組みの話ではなく、どうしても枝葉の話になりがちである。ただ、やり取りする相手が役職がある方だったりする場合は、こういった文脈からデジタルマーケティングの話を進めていかないと、予算を獲得するのは難しいということを最近実感するので、読んで勉強になりました。

 

2016年7週目のこと

このシリーズを書こう、書こうと思っていたけど放置してしまった。これは特に自分に向けて書いている部分も大きいので、ちゃんといつどこで書くか決めておかないと。

 

この週のダイジェスト

2/12(日)

映画の話ばっかりする飲み会をした。どんな映画を見たかも楽しいけど、どう見たか、何を感じたかの話をもっと聞きたい。

 

2/13(月)

恵比寿にチャリで行く。

ガーデンプレイスで昼から子供と遊んでいる母親の集団を見て、改めてこの人たちめちゃセレブだなと思ったり、アトレの有隣堂で時間をつぶしていたら、隣の人がバレエの雑誌を立ち読みしていて、バレエの雑誌(鑑賞用ではなくて、習っている人向けの雑誌)があること、そして、それを立ち読みする(=雑誌の需要がある)ことに二重の意味で驚いたりしていた。恵比寿は、中学生のときから馴染みがあるけど、その当時は、このあたりに住むことが意味するニュアンスをあまり汲み取っていなかった。

初めての恵比寿ガーデンシネマで、モーガン・マシューズ「僕と世界の方程式」とグサヴィエ・ドラン「たかが世界の終わり」を見る。ドラン作品は、今までガツンときたことはないんだけど、いつか打ちのめされる日がくるのではないか、と思って見ている。今回のラスト、ただ事じゃないことが起こっているということは伝わってきたので、次も期待。

このレビューは面白かった。

i-d.vice.com

 

2/14(火)

この日は、カルテットの序盤にあまりに乗れなかったことを鮮明に覚えている。この次もつまらなかったら、どうしよーと思った記憶。(その悩みは杞憂に終わる)

池辺葵「雑草たちよ 大志を抱け」が前作の「プリンセスメゾン」に引き続き面白かった。どんな人も必ず大切な物語を持っていて、その尊さに胸がいっぱいになる話。山内マリコ作品の影響かもしれないが、地方の高校生の話が基本的に好きなんだけど、これはちょっとテイストが違った。多くの地方を舞台にした話は地方の閉塞感に息がつまる、みたいな描写があるけど、今作はあまりそういった描写がなかったことが大きいのかも。 

雑草たちよ 大志を抱け (フィールコミックスFCswing)

雑草たちよ 大志を抱け (フィールコミックスFCswing)

 

 

2/15(水)

図書館で読んだこの本が面白くて、ブログにまとめてみたら、長谷先生本人にRTされた。 

映像文化の社会学

映像文化の社会学

 

 

m-tenenbaum.hatenablog.com

せっかく映画をたくさん見る習慣があるなら、もう少し見方・語り方の引き出しを増やしたいなという問題意識があるので、これは本当に分かりやすかった。

 

2/16(木)

この日はゼメキス「マリアンヌ」をみた。前作「ザ・ウォーク」以来ゼメキスが好きになっている。マリオン・コティヤールの衣装がとても綺麗だった。「カサブランカ」が元ネタになっていると聞いたので、そちらもみたい。

realsound.jp

 

2/17(金)

ボウイ展を見に天王洲アイルまでチャリで出かける。なかなか遠かった。展示会の感想はここに書いたけど、かなり楽しかった。思わずクリアファイルも買った。スタッフの人もかなりいい感じだった。

m-tenenbaum.hatenablog.com

ちなみにボウイの曲だと「Rebel Rebel」か「Heros」が好きです。

 

天王洲アイルまで行く間に、金銀のポケモンが追加されたというので、ポケモンgoを再開したらまんまとハマる。学校がない時期にタダで楽しめるコンテンツは中毒性が高すぎる。デートスポットで有名なT.Y. HARBORを尻目に一人でポケモンしているのは、俯瞰で見ると、なかなかの冴えなさで思わず早く卒業して、お金稼ぎたいなと強く思った。この日は、チャリを長い時間漕いだので、初めて近くの銭湯に行ってみたら、休憩スペースが銭湯のわりに広くて、かなり快適で、今後も使っていきたいなと思った。

 

2/18(土)

この日は、ゼロックススーパーカップで鹿島が勝ったのを見届けた記憶しかない。とりあえず一冠

デミアン・チャゼル 「ラ・ラ・ランド」

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ありえたかもしれない未来に思いを馳せつつも、現状を肯定していくラストは好き。

それこそ、小沢健二の新曲「流動体について」とのシンクロニシティーがある

シネマカリテや閉館したシネクイントでかかっていたら、すごい素敵な作品を見た!って思えたんだろうなという印象。

近年でいったら「はじまりのうた」みたいな受け入れられ方で人気が広まっていくなら自然だと思えるけど、宣伝で言われているような映画史に残る傑作だとか、エポックメイキングな作品かと言われれば、それはあまり腑に落ちない…

前作「セッション」は結構好きです。

以下気になったところ3点


1. 話運びの拙さ

2人の関係性が大きく変化する2カ所の大事な場面(映画デートと1人芝居後の喧嘩)へのストーリーの運び方がうまくないと思った。

予定をきちんと確認して、ダブルブッキングがあったら、連絡すればいいじゃん。
同じような展開が2回続いたので、上手くないなと思った。

エマ・ストーンはまだ、冒頭でオーディションの予定を忘れていたシーンがあったので、そういうズボラな人なのかなと思えたけど、ライアン・ゴズリングは、不自然で唐突なダブルブッキングで、あのケンカ後ならきちんと予定確認してよ、最低でも撮影で行けないってメッセージ送るのが妥当じゃない?

2.ミアの魅力の乏しさ

全編通してミアというキャラクターが好きにならなかった。映画館で上映中のスクリーンの前に立つなんて映画が好きな人がとる行動としてとても信じられないし、音楽を蔑視した態度とるじゃん。ああいう人は嫌いだ。

肝心の夢を追っている姿も切実には見えないし、セブに対する態度もなんかペラペラに見えちゃって、この人の夢を応援したい気持ちにならない。

 

3.ミュージカルシーン

最初とラストは最高だけど、それ以外ミュージカルシーンは迫力もあまりないし、明るく楽しくって感じでもなくてうーんって感じだった。高揚感が意外となかった。


しかも今感想書いてて思ったのは、考えたことを熱量もって伝えたい気持ちでもないというのが期待していた分すごい残念。

自分でも細かいところを書いている気がするけど、そういった細かいところが気にならなくなるほど素晴らしいものがあったか?と言われるとかなり微妙でした。サントラもかなり聞いていたのに。

 

でも公式サイトの推薦コメントでは山崎まどかさん、山内マリコさんといった普段映画を見るときに参考にしている方の絶賛コメントがあってあれだし、瀬田なつきがロマンティックだって褒めてるけど、あなたの映画の方がキュートでロマンティックだと思った。(Parks楽しみ!)

 

 

塩田明彦「映画術 その演出はなぜ心をつかむのか」からカサヴェテスの話

 暇だけど、お金は相変わらずないし、バイトをするモチベーションは皆無なのでひたすら大学の図書館で気になる本を読む日々なんですが、久しぶりに読んだこの本の内容が初めて読んだ時(おそらく約3年前)よりも理解できて興奮した。 

映画術 その演出はなぜ心をつかむのか

映画術 その演出はなぜ心をつかむのか

 

 今回再読した際に、一番気になった部分はカサヴェテスについて言及するところだった。

 カサヴェテスに関しては、今まで作品を全く見てこなかった。名前は知っていたが、敷居の高さを感じていた。

 しかし、そんな私もカサヴェテスに興味を持ち始めるきっかけがあった。

 それは去年「ハッピーアワー」を見ていたく心を動かされたことだった。

 あの作品は、当初「BRIDES」という仮タイトルがつけられていて、それはカサヴェテスの「ハズバンズ」という作品にちなんだものだったという。それならもしかしたら私にもカサヴェテス作品を楽しめる可能性があるのかもしれないなと思っていたところで今回の本での言及だった。

 具体的にカサヴェテス作品の特徴を著者はこう語っている。

 カサヴェテスの映画は、人物そのものがドラマ-被写体としての人間そのものをドラマとして捉えています。

 つまり人間の内面に強烈にフォーカスしているんですけど、それでもカサヴェテスの映画が、世に山ほどある、いわゆる「人間の内面を描いた映画」に比べて圧倒的に面白いのは、登場人物が行動することを忘れないからなんですね。あくまで、「行動」を通して「感情」を捕まえようとしている。

 それまでのアメリカ映画の登場人物の作り方というのが、「この人はこういう人なんだ」しか言いようがない、その「性格」が、人物の「行動」のバネになっていたのにたいして、カサヴェテスは、「性格」の部分を「感情」に置き換えたわけです。今こういう「感情」だから、この人はこういう風に「動く」と。

 

(普通の映画監督は、ひとつひとつのシーンが明快に何について語っているのかを描いているという話から)

ところがカサヴェテスはそうしない。なぜなら感情が揺れ動くから。だから一つ一つのシーンがどんどん長くなってしまって、構成はあるんだけども、構成よりも一つ一つの心の持続によって観客の興味を引っ張っていく。作劇によるサスペンスではなくて、シーンが持続していく中での臨場感というか、登場人物たちの感情や行動が一瞬後にはどこへ向かっていくかわからないっていう、そういうハラハラドキドキによってサスペンスを生み出していく。そんなふうに映画を作ることが可能なんだということは、これはやっぱりものすごく革新的な驚くべき発見だったわけです。

ここで書かれているカサヴェテスの話は、「ハッピーアワー」にもかなり影響を与えていることが下記の濱口監督のインタビューからも伺われる。ここでは「感情」を「エモーション」と言い換えられているけど。

『ハッピーアワー』濱口竜介インタビュー 「エモーションを記録する」| nobodymag

 

 僕は『ハズバンズ』というものに、もしくはすべてのカサヴェテス作品に「エモーション」を感じるわけです。そして、実のところそれを見なければきっと映画を作るという選択肢自体そもそもなかったような気がします。このエモーションというものを追求しない限り、僕には映画を作る意味というのはないんです。そうきちんと思えるようになったのは最近のことですけど。なので、答えになるかはわからないんですけれど、エモーションというのは当然見えないんだけれど、見えるもの、聞こえるものを通じて感知されるものだと思うんです。その点では、風みたいなものですね。

 

 このエモーションをどう記録するかということに関しての工夫の軌跡はこの本に記されている。 

カメラの前で演じること

カメラの前で演じること

 

 カサヴェテス作品への敷居が下がったので、近いうちに借りてみようと思った、という話。

 

m-tenenbaum.hatenablog.com