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日々の一部始終

「半分のぼった黄色い太陽」とアディーチェのこと

2,3年前にも読もうと思って図書館で借りたけど、挫折してしまったアディーチェの「半分のぼった黄色い太陽」に再トライして読み終えた。最年少でオレンジ賞という女性作家が英語で書いた本の中でその年最も優れたものに与えられる文学賞を受賞し、世界に注目されたのも納得。とても面白かった。読後の感慨が深かった。

半分のぼった黄色い太陽

半分のぼった黄色い太陽

  • 作者: チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ,くぼたのぞみ
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2010/08/25
  • メディア: ハードカバー
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なぜ再トライしたのかというと、挫折していた間に、彼女がTEDでスピーチした「We should all be feminists」がビヨンセの曲やクリスチャン・ディオールのショーで引用されたり、どんどん影響力が高まっている雰囲気を感じていたからだった。

www.youtube.com

本は、第二次世界大戦後のナイジェリアでビアフラ戦争という内戦の中で生きた姉妹の生活を中心に描かれている。人々がアフリカ・内戦といったワードを聞いた時に連想しがちな、政府や軍部の腐敗、飢餓だけではなく、食べたり、飲んだり、唄ったり、冗談を言い合ったり、恋をしたりする当たり前の市井の生活が描かれる。生きづらさを感じる女性はどこの世界にもいるという当たり前のことに気づかされる。

最初おじさんが私と結婚したころ、家の外の女たちがやってきて、わたしに取って代わるんじゃないかと気が気じゃなかった。いまじゃ、彼のすることでわたしの人生が変わることは絶対ない。それはわかっている。わたしの人生は、わたしが変えたいと思ったときだけ変わるんだ。

 

今日映画が公開された、こうの史代のマンガ「この世界の片隅に」は、この小説と世界観が近そうだから早く映画を観に行きたいなと思った。

 

 

彼女が別のTEDスピーチで述べた「シングルストーリーの危険性」も、画一的な価値観で世界を捉えてしまうことの恐ろしさについて語られている。これは日本語訳で視聴できるので是非見て欲しい。

www.ted.com

 

"The single story creates stereotypes,and the problem with stereotypes is not that they are untrue,but that they are incomplete.They make one story become the only story."

 (中略)

"The consequence of the single story is this:It robs people of dignity.It makes our recognition of our equal humanity difficult.It emphasizes how we are different rather than how we are similar."

ここが好き。 

 

 

【Book】知らないはずの、知っていること/『夜の姉妹団』『明日は遠すぎて』 | 花園magazine

アディーチェはまだ30代と若く、著作もまだそれほど多くないので、上のブログで

読みたくなる素敵な感想が書かれている「明日は遠すぎて」、短編集「アメリカにいる、きみ」、発売されたばかりの「アメリカーナ」も読みたい。

 

明日は遠すぎて

明日は遠すぎて

  • 作者: チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ,くぼたのぞみ
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2012/03/13
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アメリカにいる、きみ (Modern&Classic)

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アメリカーナ

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これから時代を担っていくであろう作家(作家に関わらずクリエーター全般そうだけど)をリアルタイムで応援することができるのは今を生きる醍醐味がある