最果タヒ「きみの言い訳は最高の芸術」など、最近読んだ本のこと
最果タヒ「きみの言い訳は最高の芸術」
最近至る所で注目を集めている最果タヒさんのブログに書かれていたエッセイを書籍化したもの。
浅い関係でいてくださいと、思うようなこともある。
共有するのは感情だとか苦労だとか不幸だとかよりも、お天気や食べたケーキがおいしいことだったり、そういう他愛もないものであってほしいと思っている。
人間が複数いる限り、私たちは「私たち」にはなれなくて、たぶん永遠に個人がよりそっているだけなのだと思う。ただの群れだ。それを孤独だと思うことはなく、ただどこまでも他人でしかない存在とともにいて、他愛もないものを共有して、そのことを幸せだと信じて生きていく。そんな自分のひからびた感性をちゃんと愛していこうと決めている。
たくさんメモとったけど、ここが一番好きかも。インターネットに関するエッセイもいくつかあったりするからかもしれないが、世代の近さを感じたり。
真魚八重子「映画なしでは生きられない」
色々な媒体で名前を見かける真魚八重子さんの映画評論集。装丁がかっこいい!
トム・クルーズ論を読んで、日本で、トム・クルーズに近いところ(基本的には王道を歩みつつも、しばしばパブリックイメージからずれた役を演じたり、意外な監督の作品に出たりする)にいる俳優は福山雅治なのかなと思った。
あと、時代を先駆けてモラハラを描いていたっていう解釈の成瀬巳喜男論も面白かった。
イーユン・リー「さすらう者たち」
中国生まれだけど、今はアメリカに住んで英語で執筆しているという21世紀の世界文学感の強いイーユン・リーの作品。
文革後の中国のある街で、1人の女性が政治犯として処刑された前後の話を街に住む人々が多層的に語る群像劇、読みやすかった。
三島由紀夫「お嬢さん」
- 作者: 三島由紀夫
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2010/04/24
- メディア: 文庫
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本格的な文芸作品っぽい三島由紀夫はなかなかハードルが高いのだけど、これは当時の若い女性向けの雑誌の連載で書かれた軽い感じの小説で楽しい。広尾の有栖川公園がロマンスの舞台になっていて、自分が知っているあの公園と同じとは思えないけど、微笑ましい。
山内マリコ「あのこは貴族」
単行本が発売されている前にcakesで週3回更新されている山内マリコさんの新作。
山内さんの小説は、地方で思春期を過ごす女子の話が多かったから、都会のお嬢様が主人公の話は新鮮。でも、新宿駅からタクシーを使って、グランドハイアットに行って、アフタヌーンティー楽しむ女子大生とか登場人物の人柄を描写するディティールの細かいところは相変わらずでそういうのとても好き。
山内さんへの思いはこのエントリにも書いてあったりするのでよかったら。
最近読んだ本はこんな感じですが、他にもこちらのエントリに書いてあったりするのでよければ読んでくれたりするとハッピーです。