加藤陽子「それでも、日本人は『戦争』を選んだ」
今、「行ってみたい時代はどこ?」 と聞かれたら、「日清戦争以降から第二次世界大戦の終結までの約50年間」と答える。
近頃、安保法案をめぐる議論など、なかなか物騒な感じになっている日本。それこそ、ニュースや街中では「戦争」という単語を見聞きすることもある。
そういう時、「第二次世界大戦の前の日本の雰囲気ってどうなってたんだろうか?」ということを思う。それこそ、戦前と今が近い雰囲気だったら、あんまりよろしくないわけで...
加えて、気になることがもう一つ。
もし、自分が当時生きていたら、日本の状況を客観的に分析して、悲惨な戦争の結末を予想することができて、戦争に反対していたのだろうか?、それとも、喜び勇んで戦争に参加していたのだろうか?
そんな疑問に答える格好のテキストが加藤陽子の「それでも、日本人は『戦争』を選んだ」である。
普通のよき日本人が、世界最高の頭脳たちが、「もう戦争しかない」と思ったのはなぜか?
高校生に語るー日本近現代史の最前線
という表紙のコピーに惹きつけられて読んだが、とても重厚な内容で読み応えがあった。一回読んだだけだと、内容を咀嚼しきれていない気もする。絶対に日本史の知識が必要だと思う。
この講義に参加している高校生は栄光の優秀な生徒だから、先生の質問に対する回答も鋭くてビビる。ちなみに、2010年の小林秀雄賞受賞作品でもある。
アカデミックな人が、戦争の実態を抉る「問い」を適切に設定して書いている本なので、胡散臭い戦争関連本を読むよりオススメです。
この本の何が良かったのかというと、国際連盟の脱退といった、史実としてはもちろん知っているけど、なぜそんな行動に踏み切ったのか?ということに関しては詳しくは知らない事柄について深く掘り下げられている点が良かった。
今まで知らなかった資料を多数提示してくれる点も良かった。日本政府に対してかなり批判的な気持ちを抱いていたことがわかる、パリ講和会議での松岡洋右の直筆の手紙などは、暴走した外交官という彼に対する印象が変わった。天皇を戦争を踏み切るように説得するためにどういうデータを示したか、そして、実際に戦争が始まると、そのデータがどのように破綻していったかなども数字で示されていた。
この本を読んだ結果、第二次世界大戦前と比べると、今は日本が外交で孤立している感じがそれほど強くないから少し安心したけど、国内政治の動向は油断はしないように、きちんと追っていかないとダメだと思いました。
今週のお題:行ってみたい時代